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■a-Si:H膜を用いたTOチューナブル波長フィルタ

水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)膜は,近赤外波長で透明であり,他の材料より一桁大きな屈折率温度係数をもちます.a-Si:Hを多層膜バンドパスフィルタのスペーサ層に採用すれば,熱光学効果(TO)を利用して透過波長を幅広く変化(tunable)できます.次世代の光加入者通信ネットワーク(NG-PON2)では,通信量増に対応すべく多くの異なる波長信号を光ファイバ中に同時に伝送させますが,目的の波長信号を取り出すのに高性能かつ経済的なチューナブル波長選択デバイスが必須です.本研究では,a-Si:H膜を用いてTOチューナブル波長フィルタの開発を進めています.車の自動運転スマートホームのようにあらゆる機器がネットにつながる2030年代には通信量が今の1000倍以上になると言われます.本研究は,通信ネットワークを活用した便利な未来社会の実現に貢献します.

■ファイバ先端に高屈折率 μレンズを埋め込んだレンズド光ファイバ

 次世代の光導波路であるシリコン細線光導波路との高効率結合を目的とした、高屈折率層被覆(HILC:High Index Layer Coated)レンズドファイバは現在企業と協力して実用化研究を進めています。現在,波長1.55μmの光に対し、ほぼ回折限界のビームスポット直径1.3μmを実現しています。加工に必要な装置やスパッタ装置を所有しています。

■シリコン光導波路の入出力部でビームサイズを拡大するスポットサイズ変換器(エッジカプラ)

データセンターは,通信機器やコンピュータを設置・安定運用するために特化された施設であり,今後の通信量爆発増に伴う設置スペースや消費電力の増加抑制という大きな課題をもちます.シリコンフォトニクス(シリコン基板上に光素子を形成する技術 ※動画)は,大きな屈折率差を利用して光回路の超小型高集積化(面積従来比 1/100~1/1000)を可能とし,データセンターの課題解決に期待されます.シリコンフォトニクスで利用される光導波路は、シリコン細線導波路と呼ばれ、そのコアサイズはサブミクロンオーダー(0.3μm×0.5μm)の非常に小さいものです。一方で、シリコン細線導波路と外部とをつなぐ光ファイバは、そのコアサイズが10μm程度ですので、導波路-光ファイバ間の接続部ではビームサイズ変換(エッジカップラ,グレーティングカプラ,レンズドファイバ)が光結合のために必要です.結合効率のさらなる向上が課題です.
本研究では,(エッジカプラに属し,導波路の入出力部に作り込む)スポットサイズ変換器(SSC: Spot-Size Converter)の特性向上を目的に試作や解析を行っています.ダウンテーパ型SSCを提案、設計、試作しています。シンプルな構造と作製工程が特長です。更なる結合効率の向上、SSCの短尺化を目指して、新たな構造設計、試作、実験に取り組んでいます。

●今後の展開
 高屈折率・波長サイズ構造をもつ光素子の開発を展開します。特に、高屈折率かつ光通信で使用される1.5μmの波長帯で透明なシリコンをベースにした新機能光素子を開発します。高屈折率特性と微細構造を利用すると、従来では不可能だった機能を実現できます。集光、回折、偏光制御、偏向、など光の諸性質を活かした多方面の展開を進める計画です。
 レンズドファイバのもつ小型・超高NA特性を活かして光トラッピング用ピックアップやDNA分析用短波長点光源などへの応用も図る予定です。